こんにちは。
写真と旅をこよなく愛するフォトラベラーYoriです。
2019年9月頃から被害が広がり始め、観測史上最悪となった今回のオーストラリア山火事(森林火災・Bushfire)は、コアラなどの動物だけでなく人々の生活に深刻な爪痕を残しています。
シドニー郊外に位置する人気観光スポット・世界遺産ブルーマウンテンズも広い範囲を焼失しました。
本記事は、このエリアで重大な被害の出た場所ビルピン(Bilpin)、マウントトーマ(Mt.Tomah)、マウントウィルソン(Mt.Wilson)、マウントバンクス(Mt.Banks) の火災現場のレポートです。
2020年の年明けに書いたオーストラリア山火事と募金方法の記事を参考にして、大変多くの方がボランティア消防団に募金をして下さっています。
その消防士たちが命がけで活動した場所が現在どうなっているのかをお伝えしたく、現場を訪れました。
知人であり、2018年にナショナルジオグラフィック写真賞を受賞した、ニック・モイアー(Nick Moir)氏が最前で撮影した燃え狂う現場の報道写真と、今回私が鎮火後に訪れ撮影してきた写真を織り交ぜながらお伝えします。
森林火災の被害からオーストラリアは、ブルーマウンテンズは、立ち直れるのでしょうか?
スポンサーリンク
Contents
スポンサーリンク
オーストラリア・シドニー郊外ブルーマウンテンズの山火事で重大な被害を受けた場所の現在をレポート
シドニー観光で必ず行く人気スポットの一つが世界遺産に登録されているブルーマウンテンズ国立公園です。
広大な原生林は、ユーカリが放つ油分と水蒸気が太陽光と混ざり合い、独特の青い色に包まれることからその名がつきました。
この有名なスリーシスターズには幸いにも今回の山火事の被害は及んでおらず、今でも観光は可能です。
しかし、ここから眺められる景色の多くの場所で山火事が発生しました。
今は気温の高くなる夏場なので火災発生の危険は孕んでおり、緊張状態が続いています。
世界遺産ブルーマウンテンズ国立公園はどこにあるの?
シドニーから北西へ約80km、車や電車でおよそ2時間で行かれる国立公園です。
圧倒されるユーカリ原生林の広さはおよそ270,000ヘクタール。
東京都が(218,300ha)がすっぽり入ってしまうほどの広さです。
山火事はブルーマウンテンズのどこで起きたの?
今回、大変多くの皆さんが募金をして下さっているニューサウスウェールズ州地方消防局(NSW Rural Fire Service / RFS )のサイトに行くと、現在起きている火災、焼失した範囲などがリアルタイムで地図上で確認することができます。
色の濃い部分が今回の森林火災で焼失した範囲です。
こちらは、スリーシスターズ周辺を拡大させたものです。
火の手はわずか数キロの所まで及んでいた事がわかります。
燃え狂う現場と鎮火した現在を比較
ビルピン(Bilpin)、マウントトーマ(Mt.Tomah)、マウントウィルソン(Mt.Wilson)、マウントバンクス(Mt.Banks) が最悪の事態になったのは、2019年12月、クリスマスの直前でした。
ビルピン (Bilpin)
シドニーから北西へ90km、1時間半ほどで来られる風光明媚な所で、富裕層も多く住んでいる地域です。
ビルピンは果樹園、特にりんご園が有名な所。
りんご狩りなどのフルーツピッキングが出来るので、週末に子供連れで遊びに来る方も多くいます。
その場所が地獄と化したのは2019年12月、普段ならクリスマスムードで溢れる時期でした。
View this post on Instagram
狂ったように燃える現場の写真は、シドニーモーニングヘラルド紙・チーフフォトグラファーのニック・モイアー(Nick Moir) 氏が撮影したものです。
ニックはビルピンで育った方。
思い出溢れる景色、馴染みの店が手のつけられない激しい炎に包まれている。
自分の友人でもあるボランティア消防団員たちが州の消防士たちと共に命がけで消火活動をしている。
強烈な暑さと分厚い煙の中で「自分にとって、これは世界の終わり」と絶望を感じたとおっしゃっていました。
1枚目の消防士が写っている写真は、Bells Line of Road上で撮影されたものです。
1月14日に私が訪れたのは、まさにこの場所。
奥の標識は、ニックの写真の左奥に写っているものと同じものです。
焼け跡を歩いていると、腐臭が漂ってきました。
火に包まれ逃げ場を失ったカンガルーの死骸が、枯葉の中に横たわっていました。
想像を絶する数の動物たちも犠牲になっています。
動物たちだけではありません。
ブルーマウンテンズでは珍しい蛍。
1枚目の写真は、数年前、ニックが偶然蛍と遭遇した貴重な場所に連れて行って下さり、そこで撮影したものです。
1年のうち、たった3週間だけ現れる幻想的な光景。
蛍が現れるのは湿度と気温が高い日で、その光が漂うのはわずか45分間。
この場所のすぐ奥の洞窟には土ボタルが青い光を放っていました。(2枚目の写真)
近くの小川にはカモノハシも生息しています。
そう、この場所。
ここはビルピンから少し山の奥に入った場所です。
NSW州地方消防局の火災マップを見ると、悲しいことに火災が起きた場所に含まれています。
今も道はクローズされているため、その場所に行くことは出来ず確認は取れませんでしたが、蛍も土ボタルも火に包まれ全て焼け死んでしまった可能性が大きいのです。
生息環境も崩れてしまったであろう事を考えると、地球の大切な一つが失われたと胸が苦しくなってます。
View this post on Instagram
マウント トーマ (Mt.Tomah)
地元の方に伺って、火災が一番猛威を振るったエリアに足を伸ばしてみました。
それはマウント トーマの植物園の近くで、メインロードから折れて入った細い道。
車から降りると、濃厚な焦げた匂いと、表面が真っ黒に炭化したユーカリが柱のようにただただ並んでいる光景が目に入ってきました。
次の写真で、山火事の前と後を比較してみます。
奥にある電信柱を目安にして、グーグルのストリートビューでおよそ同じ位置を確認できました。
火災前の様子を見ると、この道はシダやブッシュで地面を見ることすらでないほど緑に覆われた道なのでした。
(被害に遭われた方のお気持ちを汲み、ストリート名と焼失した建物の写真掲載は伏せています。)
今ここは、全てが炭になっています。
焼け落ちた民家がいくつもありました。
燃え狂う山火事の火柱は時に70メートル、実に20建てビル以上の高さを超えるといいます。
(ソース: The Guardian公式サイト)
この動画は、昨年2019年12月15日にニューサウスウェールズ州地方消防局(NSW Rural Fire Service / RFS )により撮影されたものです。
動画の初めの部分は、まさにこのマウントトーマを襲った火災。
ご覧頂けるその火柱の高さはなんと60~70メートル。
想像の範囲を超えた威力です。
森の怒りに感じてしまうのは私だけでしょうか。
動画の後半は、先にお話ししたビルピンの様子を空から撮影したものです。
自然の脅威に対する人間の無力さが虚しい。
この動画は、同じ地域の焼け跡です。
以前はむせるほどの緑色に覆われていましたが、その色はかけらも有りません。
虚無感に襲われ茫然と佇んでいると、突然背後から、私の大好きな鳥・クッカバラ(ワライカワセミ)のひょうきんな笑い声が聞こえてきました。
生き残った命があった!森は死んでいないんだ!
再生が始まっている事を感じた瞬間でした。
動画の中で微かではありますが、クッカバラの笑い声を聞くことができます。
マウントウィルソン(Mount Wilson)
マウントトーマから少し奥に入った所にマウントウィルソンとバンクスがあります。
上の動画はそこに向かっている時に撮ったものですが、両側の道沿いは焼けたユーカリの木がしばらく続いていました。
ここはマウントウィルソンの入り口付近。
溶けたり、煤けた看板や標識を見ると、改めてここは火の海だったのだと思い知らされます。
上の2枚の写真は、今回同行したオーガニックフォトグラファーのMayu Kataokaさんが撮影中の私を撮ってくれたものです。
彼女はユーカリの撮影をライフワークとしており、森林浴の素晴らしさを広める活動もしている方なので、今回の山火事被害にとても心を痛めています。
場所はマウントウィルソンのDu Faurs Rocks からの眺めです。
写真を見るとわかるように、茶色に変色している部分が火に覆われた部分。
そして、背後の緑色の部分は火を免れたところ。
動物たちがあそこのように少しでも安全な所に避難していた事を望むばかりです。
マウントバンクス(Mount Banks)
ソース: グーグルストリートビュー
ここはマウントバンクス。
グーグルストリートビューで、火災前の様子と比べてみてください。
緑に覆われていた場所が、地面が見えるほど焼け尽くされてしまっています。
奥の山も変色しているので、この広い範囲がすべて火に包まれていたことがわかります。
被害を受けた地元の方の声
ビルピン フルーツボールのオーナーに火災が起きた時のお話しを伺う事ができました。
果樹園経営者のSimon Tadrosseさん
ビルピンのメインロードである ”ベルズライン オブ ロード” 添いにある「ビルピン フルーツボール」は店先のオブジェが目を引く人気のお店で、収穫した果物やその加工品、燻煙料理用の木のチップなどを販売するほか、カフェも併設されています。
店舗とその裏にある広大な果樹園を経営されるサイモンさん(Simon Tadrosse)が、被災された時のことをお話し下さいました。
View this post on Instagram
上の写真は、12月19日、周辺で起きている山火事の煙に包まれるフルーツボールのオブジェをニックが撮影したものです。
View this post on Instagram
事態が悪化した12月21日、サイモン氏と畑に迫る煙が捉えられています。
サイモン氏によると、午後5時頃から風が南風に変わったことで、火が一気にりんご畑へ広がりました。
空からの消火活動も虚しく、総数の40%にあたる6000本ものりんごの木が燃えてしまったのだそうです。
View this post on Instagram
The Gospers Mountain fire impacting the edge of The Fruit Bowl in Bilpin #bushfire
同じ場所、現在はこのようになっていました。
鳥や雹からりんごを守るネットが、燃えたりんごの木に覆いかぶさっています。
火災の熱の激しさが残されていました。
オーナーのサイモン氏です。
彼は4歳の時にレバノンから移民としてオーストラリアにやってきました。
ご両親が経営していた野菜畑を引き継ぎ、新たにりんご栽培を始めたのはおよそ15年前。
今回の山火事で失ったりんご園を再建するには、少なくとも4年はかかるとおっしゃっていました。
火にあたってしまった木のりんごは商品としての品質を満たす事は難しい為、全て掘り起こし植え替える必要があるのだそうです。
設備や土地を畑としての環境を整えるのに1年、りんごが実をつけるまでに3年。
果樹園の60%は被害は受けなかったものの、収入の減る事は避けられず、また、配水やネットなどの設備を再建するにも出費がかさむことは必須です。
苗木は1本$30ほどだそうですが、失った6000本分の苗木を購入するには、それだけでも1千万円以上の金額になります。
先の見通しが全くつかないにも関わらず、サイモン氏は
「うちはまだいい。隣は家も店も全て焼け落ちてしまった。60%が残ったかもしれないが、喜ぶ気持ちにはなれない。自分の店や果樹園だけでなく、ビルピン全体の復興の為に動きたい」
と優しい笑顔で話してくださいました。
スポンサーリンク
森林火災現場・シドニー郊外ブルーマウンテンズで「希望」を見た
今回の現場視察は、悲しいことだけではありませんでした。
地球からの警告、人間同士の関わり、それは確かに希望に繋がります。
地球の再生力
悲惨な山火事現場を、体中炭だらけにしながら歩きました。
黒と灰色と焼けた茶色だけの世界。
熱で溶けた標識。
木の焦げた臭いと、犠牲になった動物の腐敗臭…。
でも見つけたんです、焼けただれた木から芽吹く小さな葉っぱたちを!
たった3週間で、炭となった無機質な景色の中に、少しずつ彩りが戻ってきていました。
生命を主張するような真っ赤な若葉、
頭は焦げてるけど、しっかりと立ち上がる草の芽、
アリが活動を始めました。
ハチも蜜を集めています。
この地球の持つ再生力を人間は邪魔をしてはいけない、そして守らなくてはいけない。
森林火災で失ったものは計り知れません。
でももしかするとそれは、地球のエコシステムを浄化し再生し強化する為に必要なことだったのかもしれません。
大地からの最終警告だったのかもしれません。
私は地球の為に何ができるだろうか。
あなたは何ができそうですか?
あふれる感謝
山火事被害の大きかった地域の道路沿いには、いくつもいくつも「ありがとう」と感謝の言葉が掲げられていました。
命がけで猛火と戦ってくれたボランティア消防団・NSW Rural Fire Service「RFS」と、NSW州緊急救助サービス New South Wales State Emergency Service「SES」へ贈る感謝の言葉の数々です。
SESもRFSと同じように、ほぼ完全にボランティアの方で構成されており、自然災害時に地元コミュニティーを支援しています。
彼らが会社を休み、地元を守るために戦って下さっているのを住民の皆さんは熟知しています。
その気持ちを伝えるための心温まる行動は、火災現場を見て重くなっていた私の心も軽く柔らかくしてくれました。
Thank you RFS + SES.
ほんとうに、どうもありがとう。
スポンサーリンク
皆さんの防災の備えは万全ですか?耐用年数は切れていませんか?
もしもの時の防災グッズを備えておくことは、自分が、家族が生き延びる為に要となる非常に大切なことです。
今必要なわけではないので、ついつい後回しになりがちですが、火災や自然災害はいつ起こるかわかりません。
海外から比べると、日本は、地震・台風・土砂災害・大雪・火山噴火など、自然災害が非常に多い厳しい国。
もし準備をされていないようでしたら、1日も早く揃えられることをおすすめします。
すでに準備をされている方、耐用年数や賞味期間、買い足そうと思ってついそのままになっている物はありませんか?
この機会に是非ご確認ください。
消火器
アマゾンのベストセラー商品。安心の日本製、法定耐用年数10年。廃棄時に費用がかからないリサイクルシール付き。普通火災・油火災・電気火災に対応。
非常用防災セット
防災士が被災者の声から作った災害後3日間を生き抜く事を念頭においた防災セットで、避難所に移動する必要が有る時も運びやすい防災リュック。何をどの程度準備すれば良いのかお悩みの方におすすめです。楽天市場で各部門一位を獲得している人気のセットです。
非常用簡易トイレセット
非常用のトイレは、使いやすさ、後処理のしやすさなど選ぶ基準が色々ありますが、こちらの商品は、驚異的な防臭力を持つ素材で作られた簡易トイレです。医療向け開発から生まれた素材は、臭いも菌も漏らさず衛生面でもおすすめ。災害時にはごみの収集もありませんので、臭いが漏れない事は重要です。
スポンサーリンク
まとめ
オーストラリア山火事、シドニー郊外ブルーマウンテンズの被害最大となった現場のレポートをしました。
2019年から始まり、今もなお続いている史上最悪の山火事(森林火災)に疲労困憊するオーストラリア。
焦げた臭いが漂う焼け尽くされた現場に立っても、私には燃え狂う炎の威力と熱と恐怖をイメージしきる事はできませんでした。
消防士、被災者、そしてメディアの方達がどれだけ危険な状況で苦労をされたのか、想像を絶します。
しかし、地球の再生力を見ることもできました。
今回はシドニー郊外ブルーマウンテンズの山火事現場を訪れレポートしましたが、被害はここだけではありません。
クイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州、ビクトリア州、サウスオーストラリア州の4つの州にまたがり大きな被害が出ています。
被災者の方々の再建、生き残った動物たちの保護活動はまだまだこれからも続きます。
もし何か支援したいと思われた方がいらしたら、こちらに日本語での募金方法を紹介していますのでご参照ください。
物資が届いてもそれを仕分けする人手が足りない、道路も火事のためクローズになっている場所も多く、届いた物資を届けることも簡単ではないという現実があるので、物資による支援より、募金が望ましいそうです。
世界中の方から義援金が集まっています。
オーストラリア在住者の一人として、心から感謝いたします。
多くの方の善意を有効に生かし、1日も早く復興につながるよう祈るばかりです。
そして、自分にできる事を続けていきます。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。