こんにちは
旅と写真をこよなく愛するフォトラベラーYoriです。
今回はオーストラリア・シドニーから300kmほど西にあるカウラの観光をご紹介します。
日本人なら必ず一度は訪れて欲しい特別な場所。
ここは戦時中「カウラ事件」と呼ばれる日本人捕虜集団脱走が起きた場所です。
その背景には、西洋人や現代の日本人には理解の難しい真剣な理由がありました。
日本人墓地や日本人捕虜収容所跡は今でも大切に残され、毎年慰霊祭も行われています。
悲しい過去がある場所ですが、今では見事な日本庭園もあり、道中、黄金に輝く絨毯を敷き詰めたような菜の花畑の景色は感動そのもの。
それはそれは見事な菜の花畑で、写真好きにはたまらない撮影スポットです!
南半球最大の日本庭園では、季節感の乏しいオーストラリアにも関わらず、四季の移り変わりを堪能させてくれますし、毎年「桜祭り」も開催されています。
また、カウラは質の高いワイン生産で定評のあるオーガニックワイナリーでも有名な地域です。
カウラ事件を扱った映画、そして、カウラ事件と和解を次世代へと語り継ぐために開発されたスマホアプリ「カウラ・ヴォイセズ(カウラボイス)」も合わせてご紹介します。
Contents
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オーストラリア・カウラ観光|行き方・ベストシーズン
カウラへは車、レンタカーで行くのが一般的ですが、シドニーからカウラへのツアーを開催している旅行代理店もあるようです。
シドニー日本人会でも、9月末に行われる慰霊祭に合わせて1泊2日のツアーを開催しているようです。
定員が少ないので早めにお問い合わせください。
シドニー日本人会公式サイト問い合わせ: http://www.jssi.org.au/access
カウラへの行き方 (車)
シドニーから (308km)
ブルーマウンテンズを超え、リスゴー(Lithgow)、バサースト(Bathurst)を経由し、A41(ミッドウエスタン ハイウェイ)をひたすら進めばカウラです。
所要時間はおよそ4時間。
日帰りもできますが、できれば一泊以上の旅行がおすすめです。
キャンベラから (191km)
首都キャンベラからは、ヤス(Yass)、ブルワ(Boorowa)を経由しB81を北に進めばカウラです。
所要時間はおよそ2時間。
観光のベストシーズン
寒さの緩む9月〜10月中旬が一番おすすめです!
この時期になると、桜や菜の花など多くの花で彩られ、オーストラリアの濃い青色の空と相まって、もうそれだけで春の訪れにワクワクできます。
それを過ぎると菜の花の収穫も始まり、黄金に輝く絨毯は来年までお預けになってしまいます。
桜は9月下旬から10月初旬にかけて満開になる確率が高いようです。
ビジターインフォメーションセンター・ホログラム劇場
カウラ・ビジターインフォメーションセンター内には無料で見る事のできる小さな小さなホログラム劇場があります。
カウラ事件の全容を少女が案内してくれるのですが、非常に良くできていて面白いので是非お立ち寄りください。
年間6万人が訪れるという人気コーナーだそうです。
また、カウラはワイナリーでも有名な地区ですが、インフォメーションセンターではローカルワインや農産物、工芸品なども販売もされており、ワインテイスティングができる時もあります。
地図などは無料で配布されています。
-
- 営業日・時間:クリスマス12月25日以外、年中無休。9am~5pm
- 住所: Corner of Mid Western Highway, Young Road and Boorowa Road, Cowra
- 駐車場、トイレも使用できます。
- ウェブサイトはこちらからご覧ください。
カウラ・ヴォイセズ(カウラボイス)Cowra Voices(無料携帯アプリ)
この町で起きた戦争の悲しい歴史を風化させたくない。
“平和”と“和解”をテーマにしたカウラ住民のインタビューを、次世代へ伝えやすい携帯アプリとして開発されたのが、カウラ・カウンシルから配布されている「Cowra Voices」です。
このアプリは、オーストラリアの学生たちにも戦争の悲しい歴史の理解を深めるために利用されており、その様子は2019年にNHKでも紹介されました。
開発を手掛けたのは、オーストラリア在住のメディア・アーティストの金森マユさん。
彼女がリードし、元カウラ美術館館長ジャッキー・シュルツさん、オーディオ担当するABCラジオのプロデューサー福井真佐子さん、デザインとITを担当する村岡稚恵さんらとプロジェクトを組み、人々の生の声や経験談を通して、ユーザーが身近にカウラの歴史体験のできるアプリが出来上がりました。(Source: Japaralia)
インタビューは非常にクリアな音声だけでなく文字にも起こされているので、英語が苦手な方でも理解しやすいです。
グーグルマップと連動しており、位置もガイドしてくれるので、ご旅行前のダウンロードをお勧めします。
Apple Store、Google Playで「Cowra Voices」と検索してください。
またはこちらからも無料ダウンロードすることができます。
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オーストラリア・カウラ観光|日本庭園・菜の花畑に感動!
日本庭園
この庭園は1979年に日豪和解のシンボルとしてオープンしました。
広さが5ヘクタールにもなる、南半球最大の日本庭園です。
政界要人の邸宅や、海外でも多くの日本庭園を手掛けた造園家・作庭家の中島健氏(故人)による設計です。
ここは日本庭園の形式の1つ「回遊式庭園」が採用され、小川、滝、池などで表現された日本の景色の中を散策することができます。
5人の庭師により丁寧に手入れをされた庭園には、春になると10種類以上の桜が咲き、お花見ができるのも大きな魅力です。
四季の趣を大切にする日本庭園ですので、春だけでなく、1年中それぞれの美しさを堪能することができます。
営業日・時間:クリスマス12月25日以外、年中無休。8:30am~5pm
入場料:大人$15、年金受給者$13、学生$13、12才未満の子供$8、家族$40
(2020年3月現在)
日本庭園公式サイトはこちら。
カウラ桜祭り
毎年恒例となった「カウラ桜祭り」が日本庭園で9月下旬に開催されます。
コロナウイルスの規制で変更があるかもしれませんが、2020年は9月26日(土曜)10am~4pmに予定されています。(公式サイトでチェックしてください)
毎年行われるイベントでは以下のようなお子さん連れでも楽しいプログラムが沢山用意されています。
【デモンストレーション】 和太鼓、抜刀術、相撲、合気道、空手、武芸、日本舞踊、琴、尺八、生け花、盆栽、藍染など
【ワークショップ】 茶道、着付け、折り紙など
また、シドニーのコーラスグループも歌声を披露します。
"Go fund me" Cowra Japanese Garden Needs your Help to Survive
地平線まで続く菜の花畑に感動!
シドニーからカウラへ向かう、A41(ミッドウエスタン ハイウェイ)添いには、それは見事が菜の花畑が広がっています。
ミッドウエスタン ハイウェイの"Mandurama"を過ぎたあたり(カウラからおよそ40km手前)から、主に右手に黄色い絨毯が広がっています。
この菜の花はキャノーラオイルを取るための畑で、ここで精製されたオイルは日本にも輸出されているそうです。
無断で畑に入ると、最低$5000の罰金です。ファーマーたちに敬意を払いましょう!
夕方になってくると、菜の花の色も温かみのある色に変わり更にゴージャス!
光に縁取られた子牛が挨拶に来てくれました。
ワイナリーも外せない!
カウラに最初のブドウの木が植えられ他のは1973年。
寒暖差があり乾いた晩夏が特徴の地域なので、ブドウの熟成に最適な条件が備わっているため、現在ではワイナリーの数は40を超え、品質の高いワインを生産しています。
ビジターインフォメーションセンターでも、カウラのワインが沢山販売されていますが、時間が許せばワイナリーを訪れ、テイスティングしながらお好みのワインを探すのも楽しく贅沢な時間です。
宿泊もできるおすすめのオーガニックワイナリー
敷地内にワイナリーコテージがあり、宿泊もできる人気のオーガニックワイナリーを2ヶ所ご紹介します。
Wallington Wines ACO認定オーガニックワイナリー
バイオダイナミック農法を採用しているオーガニックワイナリーで、ブドウとオリーブ生産でAOC認定を受けています。
2020年にはヤングワイナリートップ50にも選ばれたほど、品質の高さに定評のあるワイナリーです。
ここの敷地内には宿泊できるワイナリーコテージが3棟あります。
時期が合えば、ワインになるブドウ収穫のお手伝いもできるそうですよ。楽しそうですね!
次回は是非このコテージに宿泊したいと思います。
カウラ市内からおよそ46km、車で40分。
住所: 82 Lawrence's Rd Nyrang Creek, Canowindra NSW
Rosnay Organic NASAA認定オーガニックワイナリー
こちらも徹底したバイオダイナミック農法を採用しているオーガニックワイナリーです。
2012年にNSW州のオーガニックパイオニア賞、2016年にはNASAAオーガニックワイン オブ ザ イヤーなど数々の賞を受賞しており、オリーブ、イチジク生産でも認定されているファームです。
こちらにも宿泊できるワイナリーコテージが1棟あります。
運転を気にしないでワインテイスティングができるのは嬉しい事の1つです。
カウラ市内からおよそ34km、車で30分ほどの場所です。
住所:510 Rivers Road, Canowindra, NSW 2804
オーストラリアのオーガニック認定の基準についてはこちらの記事でも簡単に説明しています。
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オーストラリア・カウラ観光|日本人墓地・捕虜収容所跡をお参りする
カウラ事件・カウラの悲劇は、近代軍事史上最悪の戦争捕虜脱走事件ですが、日本の歴史教科書には登場せずご存知ない方も多いので、概要を説明しておきます。
カウラ事件・カウラの悲劇とは?
カウラ事件とは、終戦一年前の1944年8月5日深夜、オーストラリア・カウラの捕虜収容所で起きた日本人兵による集団脱走事件の事です。
「生きて虜囚(りょしゅう)の辱(はずかしめ)を受けず、死して罪禍(ざいか)の汚名を残すこと勿(なか)れ」
これは1941年に、東條英機陸軍大臣が布令した戦陣訓の一節で、日本陸軍兵士たちだけでなく民間人にも浸透していました。
捕虜になる事は生き恥とされ、日本の家族には名誉ある「戦死」と伝えられていた当時の思想がカウラ事件を引き起こしました。
捕虜である事自体が彼らにとっては重大な苦悩。
集団脱走は生き抜くためではなく、殺されるために決行された悲しい事件だったのです。
1944年8月5日深夜の月齢を調べてみました。
見事に満月の夜です。
逃げて生き延びる為なら、明るい満月を選ぶことはまずありません。
自殺攻撃を仕掛け殺されれば、不名誉を免れる事ができる。
死ぬための脱走。。
1104人の日本兵が脱走を決行し、そのうち234人の捕虜が5人のオーストラリア軍人と共に命を落としました。(ソース:Cowra Shire Council/Cowra Visitor Information Centre発行のカタログより)
カウラ収容所では、傷病兵の保護救済、捕虜の人道的待遇を規定したジュネーブ条約を批准しており、自国のために戦った捕虜は敵であろうとも敬意を持った上で管理するという規定を遂行していました。
十分な食事と十分な自由が与えられており、オーストラリア人はあまり食べることのない魚も、日本人の食文化を尊重し供されていたそうです。
なのになぜ集団脱走を?
オーストラリア軍人たちには理解のできない思想でした。
捕虜は生き恥とする日本人。
捕虜は自国のために命をかけた英雄。
両国にとってカウラ事件が悲劇だった事に変わりありません。
カウラ事件を扱った本や映画
前知識を持っているとその土地をより深く理解できるので、旅がもっと面白くなりますよね。
カウラ事件・カウラの悲劇を扱った映画・本をご紹介しておきます。
日本人視点から描かれた作品、オーストラリア人視点から描かれた作品をそれぞれ抜粋しました。
<ドラマ>
日本テレビ開局55周年記念『あの日、僕らの命はトイレットペーパーよりも軽かった-カウラ捕虜収容所からの大脱走』
出演: 小泉孝太郎, 大泉洋, 加藤あい, 阿部サダヲ, 山﨑 努
<映画>
『WAR OF THE SUN カウラ事件―太陽への脱出』
監督: ブラッド・ヘインズ
出演: ジェイ・コートラエ、宇佐美慎吾、原健太郎、橋本邦彦、イアン・スパーク
<本>
『生きて虜囚の辱めを受けず―カウラ第十二戦争捕虜収容所からの脱走』
オーストラリア人ジャーナリスト・カウラ歴史学者ハリー ゴードンから見たカウラ事件。
<本>
『学生が聞いた カウラ捕虜収容所日本兵脱走事件』
証言者11名が学生に語った、後世に伝えたかったこと。
捕虜収容所跡地
この階段に座りながら、何も無い大地を前に思い悩む兵士たちが居たのだろうなあ。
日本人墓地
この日本人墓地には、カウラで捕虜となっていた方だけでなく、他の地域の抑留者やダーウィンの戦いで命を落とされた兵士たちも眠っています。
オーストラリア政府は日本への友好の証として、1963年に日本人墓地を日本の領土として割譲しました。(ソース:NSW War Memorials Register)
戦後、あるオーストラリア退役軍人の1人が、日本人墓地の手入れを始めました。
その後息子さんが引き継がれ、その活動は今では多くの方に支えられています。
日豪友好の証として、日本人墓地は大切に守られているのです。
日本人にとって桜は特別な存在。
海外の地ではありますが、桜を添えられた墓地で安らかに眠られていることでしょう。
Cowra Voices の「8」が日本人墓地についてのインタビューです。
カウラ日本人戦争墓地データベース
先ほど、カウラヴォイセズを手がけられた金森マユさんをご紹介しましたが、彼女は「カウラ日本人戦争墓地データベース」プロジェクトにも参加していらっしゃいます。
カウラ日本人戦争墓地にある524基の墓地配置図、墓碑銘、埋葬されている方のお名前や所属部隊、階級、拘束場所や理由など、様々なデータがまとめられており、オンラインで検索もできるようになっているデータベースです。
このプロジェクトは、在豪日本大使館による外務省委託事業として2016年に開始、オーストラリア国立大アジア太平洋学部客員研究員の田村恵子さんを中心に調査が続けられ、3年の年月を経て、2019年に公開に至りました。
当時の尋問記録などの資料をもとにデータをまとめられたそうです。
この情報が遺族につながる手がかりになってほしいと期待されています。
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まとめ
オーストラリアのカウラで日本庭園・菜の花畑に感動し、日本人墓地・捕虜収容所跡をお参りする旅をご紹介しました。
私はシドニーに移住するまで、カウラ事件・カウラの悲劇の事は全く知りませんでした。
集団脱走という言葉を聞いた時、捕虜となり収容所から脱走した日本兵たちの苦しみの真相とは全くかけ離れた事を想像していました。
カウラの人々が大切に守ってくれている歴史の爪痕を、日本人ならなおさら風化させてはいけないと感じ入る、日本人墓地・捕虜収容所跡の訪問となりました。
悲しい出来事を知った後でも、道中の菜の花畑の感動的な景色や日本庭園の桜が癒してくれる、そんな春のカウラ観光は特におすすめです。
次回はオーガニックワインのテイスティング巡りをメインに訪れてみようかと思っています。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。