旅と写真をこよなく愛するフォトラベラーYoriです。
今回は、フォークランド諸島を旅したときに遭遇した非常に珍しい猛禽類「フォークランド カラカラ Striated Caracara」を紹介します。
ハヤブサの一種であるカラカラは非常に賢い鳥ですが、一般的に知られているハヤブサとはかなり異なる生態を持っています。
今でこそ個体数が減った為に法による保護がなされていますが、以前は「空飛ぶ悪魔 flying devils」「空飛ぶ猿 flying monkeys」と呼ばれ、フォークランド諸島では忌み嫌われる存在でした。
世界最南端に生息する猛禽類カラカラ。
写真と共に生態をご覧ください。
Contents
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フォークランド諸島、世界最南端に生息する猛禽類カラカラとはどんな野鳥?
さすが猛禽類!いい面構えです。
カラカラは世界最南端に生息する猛禽類で、ハヤブサ科の中では最大サイズ。
上の写真でクチバシを開いて中まで見せてくれているのが成鳥で、クチバシの付け根と脚が黄色いのが特徴です。
幼鳥はクチバシも脚も灰色をしています。
幼鳥が成鳥の色に達するまでに最大で5年もかかるそう。
- 別名:現地ではJohnny Rook とも呼ばれていました。フォークランド諸島に大量に生息するジョニーペンギン(ジェンツーペンギン)にちなんで名付けられたと言われています。
- 全長:約53~65cm。メスの方が若干大きい。
- 体重:1.2~2kg
どこに生息しているの?
カラカラは、南極まであと一息!という場所に位置するフォークランド諸島全体と、南米大陸の南端地域のみに生息しています。
私がカラカラに遭遇したのは、フォークランド諸島の「サンダース島」という離島です。
フォークランド諸島はペンギンの楽園として有名ですが、サンダース島にはアホウドリの繁殖地もあり、親鳥を待つ沢山のひなたちにも会えました!
ちなみにこの離島の人口は5人足らず。
羊の放牧、羊毛輸出の羊産業を営んでいます。
カラカラの繁殖
繁殖期は、南半球のフォークランド諸島の夏にあたる12月から2月末頃までで、餌になる他の海鳥の繁殖期と同時期です。
巣は地面や崖の窪みに作られます。
南極からの強風にさらされているこの島では、背の高い木は成長しません。
そのためカラカラの巣はブッシュの小枝で作られ、草や羊毛を利用し耐久性・保温性を高めているそうです。
人が植えた木はこの通り。
強風が続くため、真っ直ぐ上へ高く延びる事ができません。
カラカラの雌は最大で4個の卵を産み、雛は繁殖ができる成鳥になるまで5年ほどかかります。
国際自然保護連合(IUCN The International Union for Conservation of Nature)によると、現在の世界の個体数は合計で1,000〜2,500羽で、 2018年に発表された調査では、フォークランド諸島で約350の繁殖ペアが確認されとのこと。
ハヤブサ科の中では最も希少で、IUCNのレッドリストでは近危急種とされていますが、保護法や繁殖地での保護により、個体数が増加の傾向にあるそうです。
カラカラは何を食べるの?
一般的なハヤブサは主に生きた鳥類を食べますが、カラカラはそれだけでなく腐肉・屍肉を食べるスカベンジャーでもあります。
冬になると餌となる海鳥が激減するために捕食の範囲を広げる必要がありました。
越冬中は羊の死骸や昆虫が主な餌となります。
主な餌は
- 腐肉 (海鳥、ペンギン、羊)
- 卵・雛鳥
- ウサギ・昆虫・ミミズなど
フォークランドカラカラは猛禽類の中では最も賢い一種で学習能力もあるといいます。
知能と強い鉤爪を持つ脚や鋭いくちばしを利用し、海鳥の巣穴を掘ったり岩をひっくり返して餌を獲ります。
<閲覧注意>
若い鳥は群れを作って行動しているため、仲間同士の獲物争奪戦が非常に激しくなります。
ただ多くの場合、力のある成鳥が若い鳥を追い払って餌を独占してしまいます。
上の写真を見ると、脚の色が灰色の若い鳥が集まっていますが、クチバシの付け根の黄色がはっきりとしている一羽の成鳥が餌を独占しているのがわかります。
一般のハヤブサとカラカラの狩りは全く違う
ハヤブサは世界最速の空中ハンター!
ハヤブサの狩りは、空中を飛んでいる鳩などの獲物を上空から急降下し、鋭い鉤爪で鷲掴みして捕えます。
水平方向の飛行速度は100㎞/h前後ですが、降下の場合は300㎞/hを超えるスピード。
新幹線並みの速さ!
「速い翼」が転じて「ハヤブサ」と呼ばれるようになったというのも納得です。
ハヤブサはこのようにスピードを生かして生きた獲物を「空中で捉える」わけですが、カラカラは基本的に「地上」で狩りをします。
地面を走ったり、穴を掘ったり、岩をひっくり返したり。
水平飛行は60㎞/hなので、ハヤブサと比べスピードはずいぶん遅い。
地上に獲物が多いので、速く飛ばなくても知能を使えば狩りは充分行えます。
進化の途中で速くなる必要がなかったのかもしれません。
これは狩りが成功し、お腹がいっぱいになったカラカラの写真。
何か違和感がある。。
そう、胸の部分がぷっくり飛び出しているのが見て取れます。
ちょっとびっくりしてしまいますが、これは素嚢(そのう)といって食べた物を一時的に貯蔵し柔らかくする袋状の消化器官です。
カラカラの場合「そのう」には羽が生えていないのでこんな風に丸出しになってしまいます。
なんか痛々しいのですが、沢山食べて元気な証拠。
好奇心旺盛、悪戯好きなカラカラ
フォークランドの旅では困ったことにならない為に暗黙のルールがあります。
「荷物を放置しない。車のドアを開けっぱなしにしない。」
カラカラがね、目を離した隙にどんどん持っていっちゃうのよ〜。
特に赤い色をした物に興味をもち、赤い帽子や手袋は肉を思い起こさせるのかすぐに盗まれてしまうので注意が必要。
バックパックなども鋭いくちばしを上手に使いファスナーを開けて中身を盗んでしまうそうなので、赤い色をした日本のパスポートなんてすぐに持っていかれてしまいそうです。
フォークランドカラカラは、なぜ悪魔と呼ばれたの?
1833年にチャールズ・ダーウィンがフォークランド諸島に上陸した際にカラカラと遭遇しています。
ダーウィンはフォークランドの野生動物たちが人間を恐れない事に驚きましたが、一番印象的だったのがカラカラでした。
イギリスで見た警戒心の強い鷲や鷹と異なり、絶えず係留地の近くに出没してはいたずらをする。
黒い帽子は1マイル先まで持っていかれるし、赤い皮のケースに入ったコンパスは回収することもできなかった。
索具を壊すので、見張りを立てることを余儀なくされたほど。
ダーウィンや船員たちはカラカラの過剰な好奇心にうんざりして、「空飛ぶ悪魔 flying devils」「空飛ぶ猿 flying monkeys」と呼ぶようになったのだそう。
19世紀になりこの島に人間が移り住み、羊の放牧を始めました。
フォークランドカラカラは最大50羽の鳥のグループで狩りをしますが、牧草地で生まれたばかりの子羊も襲撃します。
そのため農民から「空飛ぶ悪魔は家畜の脅威」だと忌み嫌われ、駆除されてきました。
その結果、近危急種リストに乗るほど個体数が減ってしまったのでした。
今日では正式名称も改められ「フォークランド・カラカラ/Striated Caracara」となり、法律による保護が積極的に行われています。
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日本でも会えるフォークランドカラカラ
なんと静岡県の「掛川花鳥園」にはディアちゃんというカラカラがいるそうです。
この動画も捉えていますが、カラカラは非常に賢く鍵なんか上手に外して箱を開けてしまいます。
この箱の場合は何度も開けているでしょうから手慣れたものですね^^
こちらの動画には鳴き声も入っています!
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まとめ
フォークランド諸島の空飛ぶ悪魔を紹介しました。
汚名を着せられてしまいましたが、カラカラは非常に賢く好奇心旺盛な野鳥。
人を警戒せず悪戯好きな珍しい猛禽類です。
フォークランド諸島は、カラカラだけでなくペンギン、アホウドリ、巨大なゾウアザラシまでいる動物の楽園!
いつかもう一度訪れてみたいと思っています。
空飛ぶ悪魔にもまた会いたい!
動物写真撮影好きにはワクワクが止まらない島でした。
フォークランド諸島についてこちらも合わせてご覧ください!
<前編> フォークランド諸島旅行記・前編|ペンギンと紛争と地雷の意外な関係&写真で綴る観光情報 |
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<後編> フォークランド諸島旅行記・後編|野生ペンギン可愛すぎ!写真で巡る4つの秘境島と生き物たち |
最後までお読みくださりありがとうございました。
Source Discover Silversea Wikipedia Outside BirdLife International IUCN Red list