こんにちは。
写真と旅をこよなく愛するフォトラベラーYoriです。
この度、JCS・シドニー日本クラブ親睦の会主催の講演会にて登壇させて頂きました。
2026年度の1年間、ニュースレター「JCSだより」の表紙写真を担当しており、1月から6月に掲載された写真をメインに撮影秘話や裏話などをお話しする機会となりました。
題して『フォトトーク・地球の素顔を追いかけて』
スライド写真を変える度に聞こえる参加者の皆さんの「うわぁー」という声や、話しの合間にこぼれる笑い声に励まされ、あっという間の1時間でした。
どんなお話をしたのか、講演会で披露した作品32点と共にご紹介します。
JCSだより・講演会告知記事
Contents
スポンサーリンク
はじまりはじまり〜
ご紹介に預かりました、写真と旅をこよなく愛する、フォトラベラーYoriと申します。
本日は足をお運びくださり、ありがとうございます。
天気予報では雨だったので、皆さんのお足元が悪くなってしまうと心配しておりましたが、わたくし、自他共に認める「あっぱれ晴れ女」でして、見事に天気が回復し太陽まで顔を出してくれてホッとしました。
今年一年、JCS だよりの表紙写真を担当させていただいておりますが、今日は掲載された作品をメインに、それらにまつわるお話しをさせていただきます。
皆さんは普段スマホやカメラでどんな写真を撮っていらっしゃいますか?
写真には、「記録」「思い出」はたまた「証拠」など様々な側面がありますが、私にとっての写真は「伝えるためのツール」で、日本語、英語に続き3番目の言語だと思っています。
写真ライフのスタートは、家で待つ祖母に、自分が旅先で感動した地球の美しさや興奮を伝えたいというのが始まりでした。
写真を見せると「一緒に旅行した気分になれるね」と嬉しそうな祖母を見て、「これは続けなければならぬゾ!」と、まぁ都合の良い大義名分ができてしまったので、時間を作ってはいそいそと旅に出かけては写真に収めるようになりました。
最近は「頭でなく心で撮る」ということを大切にして、私たちが住む地球のあちらこちらに出没しては、その営みの美しさを切り取り、ウェブサイトやSNSでお伝えしています。
撮影中に目にするのは、美しいものだけではありません。
目を覆いたくなるような悲しい現実もたくさんあります。
汚染や廃棄物、環境破壊、地球温暖化、絶滅危惧種などの問題に直面すると、地球の営みのバランスを壊しているのは、我々人間という生き物だけだという現実に苦しくなることも多々あります。
私はジャーナリストではないので、現実を突きつける方法は自分のスタイルではないと思っています。
ですので、美しい写真や楽しいフォトエッセイを通して、皆さんがおのずと地球を愛おしく感じ、「その営みを邪魔しない生き方の選択」をするきっかけになればと活動を続けています。
では、地球の素顔を見に、一緒に旅へ出かけましょう。
スポンサーリンク
1月表紙:『地球史の生き証人』ボツワナ
<JCSだよりに添えたキャプション>
乾季のピーク時、隣国で降った雨が数ヶ月かけて流れ着き、世界最大の内陸デルタと変身する世界遺産オカバンゴ・デルタ。魔法のオアシスのようなその場所で一対のバオバブに遭遇した。樹齢数千年にも達するというバオバブは途方に暮れるほどの長い時間、地球の変化を静かに見つめてきたのだ。新年を迎え、地球史の生き証人はまた新たな一年を刻む。
+++
1月の表紙は、ボツワナの大地に聳える一対のバオバブでした。
星の王子様にも出てくるあのバオバブです。
ボツワナという国はあまり日本人に馴染みのない国なので、少し触れておきますね。
この国はアフリカ大陸南部に位置し海岸線が全く無い内陸国で、国土の80%近くがカラハリ砂漠に覆われている極度に乾燥したスーパードライカントリーです。
ですので、全ての生き物にとって「雨」こそが命を繋ぐための要なのです。
雨のことをツワナ語(Tswana)で「Pula」と言いますが、その雨という意味が転じて、祝福の意味もあります。
例えば「乾杯」「Cheers」も「Pula!祝福あれー!」と言いますし、国章にも「Pula 恵みの雨」という言葉が添えられています。
驚くのはドルや円などの通貨単位で、それまでもがPulaなのです。
「お支払いは一万円でございます」が「一万プラでございます」、転じて「一万の祝福あれでございます」という感じ。
お金を使うだけでも祝福されそうな素敵な通貨単位ですよね。
そんな極度乾燥した国ですが、なんと乾季のピーク時になると魔法のようなオアシスが現れるのです。
その名は世界遺産オカバンゴデルタ。
なぜそんな不思議な事が起きるのかというと、隣国のアンゴラの雨季、高原地帯に降った大量の雨が、数ヶ月かけて川を伝い乾季のボツワナに流れ込みます。
内陸国なので川の水は海に流れ出ず、洪水・氾濫を繰り返してオアシスを形成するというわけです。
オアシスが現れるのが乾季のピーク時だなんて、地球の計らいとしか言いようがありません。
この恵みの水を求めて多くの動物たちが引き寄せられます。
魔法の情景を見たい私も引き寄せられてしまいました。
こちらはオカバンゴをボートで遊覧している時に遭遇したゾウの食事風景です。
通常、ゾウというのは陸地で木の枝葉、樹皮などを主食としているのですが、魔法のオアシスでは、なんと水の中に入り込んで豪快に食事をしていたのでした。
食べているのは、数メートルある柔らかいスイレンの茎。
根元を足でこそげて切り離し、鼻で絡めて食べるのですが、長く白い茎がズルズルズルーっと勢いよく口の中に吸い込まれていくのです。
その様子を見ていたら、スイレンの茎はもう「うどん」にしか見えません。
ゾウの「冷やしうどん、うめー、パオー」という幸福感がこちらにもビンビン伝わってきました。
和食の店なんてどこにも無いアフリカのど真ん中で、私の頭の中は鰹節と茗荷とネギがどっさり乗った冷やしぶっかけうどんがチラついてしまい、どうにも落ち着かない日々を送ったことを覚えています。
砂漠に覆われたボツワナですが、サバンナを移動していると時々モニュメントのように聳え立つバオバブの木に出会えます。
樹齢1000年を超えるというバオバブは、長い間この大地を見守っている、まさに歴史の生き証人。
私たちは寄り添って立つ一対のバオバブに出会いました。
大きな実がなっており、ガイドが食べてごらんと差し出してくれたので興味津々に頂いてみると……
落雁みたいな舌触りで、ほんのり甘酸っぱく、少しずつ口の中で溶けていきます。
実はこの実、ビタミン、ミネラル、食物繊維たっぷりのスーパーフードで、地元の方々は食べたり水に溶かして栄養ドリンクを作りこの恩恵に預かっているのだそうです。
この尊きバオバブの歴史が私の体の一部になりました。
あまりにも美しい姿の木ですし、どうしても夕日や星空とのコラボを撮りたくなってしまい、ガイドにお願いして夕方に戻ってくることになりました。
到着してしばらくすると、陽が傾き赤く染まった空にバオバブのシルエットが威風堂々と浮かび上がりました。
カメラを向けますが、太陽を置く位置でストーリーが変わってくるので、好みの位置を動きながら探します。
1月の表紙に選んだ作品では、バオバブが沈む夕日を包むようにそっと枝に乗せ、愛おしんでいる感じを表現しました。
日が沈むと、夜はあっという間にやってきます。
実はこの場所、ライオンの生息地なのです。
もちろん動物園ではないので柵なんてありません。
ですので一番重要なのは、「一人でうろつかないこと。必ず皆1か所に固まっていること」なのです。
ライオンたちは、ターゲットが一つに定まらないと襲わないという習性があります。
無駄なエネルギーを使わないためです。
例えばシマウマの縞は猛獣の目を撹乱させる働きがあり、群れることで1つの個体として認識されない効果を高めているそうです。
ガイドからは、万が一ライオンが現れても慌てず、皆固まって静かにゆっくりサファリカーに乗り込めば大丈夫だと説明を受けました。
あたりは真っ暗になり、天の川が見えてきました。
私たちはサファリカーから降り、肩を寄せ合い、カメラを設置し、急ぎシャッターを切りました。
ライオンよ、現れてくれるなよとドキドキしながら撮ったのが、この写真です。
夕方、枝に太陽を乗せていたバオバブが、今度は天の川に触れようと手を伸ばしているようです。
流れ星も応援しています。
バオバブが宇宙の一部のように見えませんか?
地球は宇宙の一部です。
だからあなたも私も宇宙の一部。
そう感じて頂けたら嬉しいです。
スポンサーリンク
2月表紙:『七色のしぶき』オーストラリア・マンリービーチ
<JCSだよりに添えたキャプション>
強風は避けたいものだが、それは時に素敵な景色を見せてくれる。大波が沖へ向かって吹く強い風を正面から受け、ゆっくりと巻いていく。波のてっぺんが堪えきれずにしぶきとなって飛び上がった。待ってましたとばかりに、陽光がしぶきをキャンバスに虹色を描く。一瞬だけ現れる自然からの祝福。強風すら愛おしくなってくるのだ。
+++
2月の表紙はマンリービーチで撮った七色のしぶきでした。
撮影した日は吹き飛ばされるほどに強い西風の日で、もしかしたら!と思い海に向かいました。
わざわざそんな日に海へ行くなんてお馬鹿さんみたいですが、荒ぶる風の日は、一瞬だけ虹色の光が波を飾ることがあるのです。
ただし、海に向かって吹くオフショアの風の日に限ります。
逆向きのオンショアの風は波を潰してしまい、しぶきが舞い上がらないからです。
この日、波は向かい風を真正面から受けて、耐えるようにゆっくりと巻いていました。
風にあおられた波頭が、ついに耐えきれず、パーっと空に舞い上がった瞬間、斜めからさす太陽の光がそのしぶきをキャンバスに虹色を描きました!
本当に一瞬です。
この一瞬を逃さないよう、カメラを構えたまま私もジーッと風に耐え続けました。
構図的には、しぶきの部分を強調するため、その背景を空ではなくコントラストの効く濃い色の海にするのがポイントでした。
しぶきが舞うたびにハート型だったりイルカの尻尾型だったり、様々な七色が飛び出します。
ビーチにいた人の何人がこの現象に気づいていたかしら。
もし皆さんもオフショアの強風の日、太陽が斜めから差す時間に海にいらしたら、波頭を意識して虹を探してみてください。
風と波と太陽、そう、地球と一緒に遊んでいるような気分になりますよ!
虹というのはいつでも私たちをワクワクした気持ちにさせてくれますが、夜にも虹が現れることをご存知ですか?
月の光が作り出す、それはもう幻想的な「ナイトレインボー」または「ルナレインボー」「ムーンボー」と呼ばれる現象です。
ハワイでは古くから「見た人に幸運や大きな変化をもたらす最高の祝福」と言い伝えられています。
以前、ベネズエラの雷多発地帯としてギネス登録されているとんでもない場所へ雷を撮りに行ったことがあるのですが、雷を散々落とした嵐が去った明け方に、偶然にもナイトレインボーに遭遇したことがあるのです。
でもその時は月光が弱く、虹も非常にうっすらしたものでした。
そんな体験をしてしまったばかりに、もっと存在感のあるナイトレインボーに出会ってみたいと、想いは募る一方です。
6年経ち、狙いを定めていた世界三大瀑布の一つ「ビクトリアフォールズ」を訪れる機会を作りました。
国立公園は満月を挟んだ3日間だけ夜間入園を許可しています。
ですが、水量の多い季節は土砂降りの雨のように滝のしぶきが降ってくるので撮影どころではありません。
逆に乾季だと、しぶきが少ないため虹は出ません。
6〜8月の満月の時にしかチャンスは無いのです。
一般人にとっては拝むチャンスが一年に10回も無い貴重な現象です。
せっかく行くのだから、月光の強いスーパームーンの日を選びました。
より存在感のあるナイトレインボーに出会えるだろうと期待して。
実はこの前日、ザンビア側からも挑む予定でしたが、水量が足りないということで国立公園は夜間の開園をしてくれなかったのです。
翌日、ジンバブエに移動し再度挑戦。
国立公園の入り口で今夜は開園されるのか否か、そわそわしながらレンジャーの判断を待ちます。
40分も待ったでしょうか、無事に開園決定!
レクチャーを受けた後、レンジャーの先導で夜の公園に入りました。
「コブラが出るかもしれないから、歩道以外の場所には入るな」と言われていたので、真面目に暗がりの中を進みました。
探検隊員の気分です。
聞こえてくるのは滝の轟音だけ。
突然、大雨に見舞われます。
でも月を隠す雲は無い。
大量の滝のしぶきでした。
木々の間から月が見え隠れしています。
いーぞいーぞ!
ドキドキしながら暗い林を歩いて行くと、突然視界がドーンと開け、そこには夢のような世界が広がっていたのです。
それがこの光景です。
あまりの神々しさに、滝の轟音は私の意識から消え、静寂が訪れました。
しぶきをキャンバスに、月光が虹を描いています。
しかもダブルナイトレインボー!
さすがスーパームーンです!
しぶきは強くなったり弱くなったりするので、そこに描かれる虹も伸びたり縮んだり、まるで生きているかのようなのです。
「こっちにおいでおいで〜」と言われているような気がして、虹を触りに行きたくなってしまいましたが、柵のお陰で滝壺に落ちることなく、今も生きながらえています。
夢って、ただ待っているものではなく、捕まえに行くものなのですね。
6年越しの夢をしっかりと捕まえた、祝福の夜となりました。
続きまして、今度は皆さんを「5次元の世界」へお連れしましょう。
スポンサーリンク
3月表紙:『ささやき合う緑』オーストラリア・シドニー
<JCSだよりに添えたキャプション>
シャッターが開いている間に意図的にカメラを動かし撮影する手法「ICM」を用いて、近所の公園の植え込みを撮影した。合成や加工をせずとも、葉は透き通り、重なり、揺れ動き、ささやき始め、深みのある印象派絵画風の世界が現れる。身近な被写体でも、別次元へと連れて行ってくれるのが写真の醍醐味の一つなのだ。
+++
3月の表紙は、茂る葉が賑やかにおしゃべりしているような作品でした。
重なり合った葉が透き通って見えますよね。
これはAIや合成加工したわけではなく、ICM・Intentional Camera Movementと呼ばれる手法でワンショットで撮影した作品です。
最近思うのですが、地球の果てまで撮影旅行に行ったり、工夫して撮っても、「AIではありません、合成加工していません」と説明しなければならないご時世となってきました。
中には「これ写真なんですか?」と尋ねてくる人もいるのです。
一旦SNSなどに投稿すれば、それもAIに吸収されていってしまう。
虚しさに溺れる今日この頃です。
AIは便利で楽しいけれど、クリエーターたちは誰でも同じような虚しさを感じているのではないでしょうか。
それでも「心で撮った写真は魂が込められているから、エッセイだって実際に体験した私が産み落とした言葉なのだから血が通っている。見た方読んだ方もそれを感じとってくれるはずだ」と信じて活動を続けております。
さて、このICMですが、どのように撮るかというと、シャッター速度を1秒から2秒と長めに設定し、シャッターが開いている間にカメラをわざと動かすのです。
光を集めすぎて白飛びする場合は、強制的にレンズを暗くするNDフィルターを使います。
この時は道端で撮影していたのですが、地味な葉っぱに向かってカメラを回したり、シュッシュッシュッと動かしたり、震わせたり、相当怪しげな人に見えていたかと思います。
思った通りの絵はなかなか撮れませんが、何枚も撮っているうちに予想外の姿が現れるのでついつい夢中になってしまうのです。
こちらも同じ方法で撮ったものです。
怪しげな人を全うした甲斐があり、Australian Photography Magazin主催のフォトコンで入賞することができました。
これらはその雑誌に掲載された4枚の組み写真です。
『時と光と存在のトリニティ』なんて、かっちょいータイトルをつけてみました。
透明ではないのに、透き通って見える葉の重なり。
違う次元に入り込んでしまったような感覚になりませんか?
身近な被写体でも別次元へと連れて行ってくれるのが写真の醍醐味の一つだと教えてくれた、ICM撮影法でした。
4月表紙:『諸行無常の雅あり』東京・祖師ヶ谷公園
<JCSだよりに添えたキャプション>
桜の一斉に咲き誇り、そして潔く散る姿は、日本古来の思想「もののあはれ」の象徴だろう。日本人の魂はそれを記憶しているらしく、桜花を目にしただけで心がしみじみと動き出す。「儚さ」を愛でる美学だ。この世は常に変化している。だからこそ「今この瞬間」を尊ぶ心を大切にしていきたい。
+++
4月の表紙は、日本人にとって特別な感覚を呼び起こす「桜」を選びました。
皆さんは、咲き始め、満開、花吹雪、花筵、どんな桜がお好きでしょうか?
どの景色も素敵ですが、私は「一斉に咲き誇り、そして潔く散る」そのことに惹かれます。
もののあはれ、儚さを愛でるという日本古来の美学は、私たちの遺伝子に組み込まれているのかもしれません。
この写真は、曇り空の日に撮影したものです。
白い花というのは案外撮影が難しいのですが、曇り空の日は光が柔らかく、色が飛びにくいので好んでいます。
柔らかい光の中で意図的に明るすぎるくらいに設定して撮ると、花びらが透き通ったようになり、真ん中の星が浮かんでくるのです。
参考までに、細かい設定抜きでスマホなどで撮るときは、背景が暗い部分を選んで撮ると、桜が立体的に浮き上がってくるので印象的な写真になりますよ。試してみてください。
「南半球の桜」と呼ばれることもありますが、もののあはれとは対照的なのがジャカランダではないでしょうか?
左はオーストラリア・NSW州北東部のグラフトンの紫のトンネルです。
この町には数千本のジャカランダが植えられており、満開になる頃は町中が紫色に染まり圧巻です。
右はシドニーのハーバーブリッジ北側に位置するニュートラルベイです。
ノースシドニーの街が青空と紫の花をまとい誇らしげに見えます。
ジャカランダは豪華に、華やかに、1ヶ月近く咲き続け人々を魅了します。
香りも強い。
そもそもジャカランダの語源は南米の先住民族の言葉で「強い香りを持つ」という意味なんだそうです。
この季節になると、いつも東西の文化や感性の違いを感じます。
例えば、日本の寺の鐘は一回ずつ撞いて鳴らされ、私たちはその音が完全に消え去るまで集中して聴き入ります。
花火の主役・尺玉も一つずつ打ち上げられますよね。
私たちは、最後の光が消え去った後の数秒間の静寂をも味わいます。
日本人は、余韻と間、消えゆく美しさを大切にしています。
一方、教会では複数の鐘を同時に奏でるし、花火も豪快に連打して光を重ねます。
西洋では満たすことに価値を置いているように感じるのです。
もののあはれを象徴する桜とは対照的に、歓喜・高揚する気持ちを引き出すジャカランダ。
日本の引き算の美学と西洋の足し算の美学の違いなのでしょうか。
そんなことを考えながら撮影しています。
こちらはマクロレンズで撮影した作品です。
華やかなジャカランダですが、一片の花を光にすかして撮ると可憐な姿が現れます。
桜もジャカランダも個々は小さく儚い存在ですが、集まれば絢爛たる美しさを作り出します。
人間社会も、個々の心が穏やかなら、集合体になっても暴動や戦争には向かわないのではないのでしょうか。
隣の人を笑顔にする。
その人がまた隣の人を笑顔にする。
その連鎖の先にはやはり笑顔があるはずなのです。
自分自身、桜やジャカランダのように、平和な集合体を作る一部でありたいと思っています。
5月表紙:『いっしょにあそぼうよー』ボツワナ・マシャトゥ動物保護区
<JCSだよりに添えたキャプション>
好奇心を溢れさせ、砂埃を上げながらインパラを追いかける子ゾウ。微笑みながら寄り添う母。
いくつになっても好奇心こそが生きる原動力だ。
興味や関心、その延長線上にある未知なる体験は脳だって活性させる。
それぞれが持つ好奇心の芽を育み合える関係を大切にしていこう。
こどもの日と母の日を祝う気持ちを親子ゾウに託して。
+++
5月の表紙は子供の日や母の日を祝う気持ちを、ボツワナで撮影したゾウの親子に託しました。
撮影した場所は、魔法のオアシスから1000kmほど南の乾燥地帯です。
この時私たちは、地元の人が聖なる木と呼ぶ樹齢400年の大きなマシャトゥツリーのそばにサファリカーを停め、そこに集まる100頭以上のインパラと木の中で果実を頬張るバブーンを撮影していました。
彼らは一緒に行動することが多いのです。
なぜなら、インパラは嗅覚、聴覚に優れているため近くの敵をすぐに見つけられる。
でも木には登れません。
一方、バブーンは木に登れて視覚が良いから遠くの敵を見つけることができますが、嗅覚、聴覚が弱いため近くの敵を見つけるのは苦手です。
彼らは、互いの弱点を補い合って共存しているのです。
インパラはバブーンが落とす果実を夢中で食べていました。
そこにゆっくりとゾウの母子が現れたのです。
表紙に使った写真は4枚の組み写真の一部なので、1枚目からご紹介します。
この子はまだ生後1年未満の子ゾウです。
草食動物は捕食者から逃れるために生まれてからすぐに歩けるよう、お腹の中で十分に育ってから生まれてくる必要があります。
そのためゾウの妊娠期間は2年という長さで、生まれた時点で子供は100kgもあるそうです。
この子ゾウは本当に好奇心旺盛で、インパラと遊ぼうとちょっかいを出し始めました。
気を引こうと足で地面を蹴ったりするのですが、食事に夢中なインパラは全く気にも止めません。
痺れを切らした子ゾウは、今度は大きく耳を広げ近づいて、積極的にインパラにアピールを始めました。
せっかくの食事中なのに邪魔をされたインパラは迷惑そうに逃げ出します。
それを見た子ゾウはインパラが遊んでくれると勘違いしたのか、「まってまって〜」と鼻を延ばして砂埃をあげながら追いかけて行きます。
子ゾウの無邪気な表情は生き生きとして、寄り添う母ゾウは「こらこら、驚かせちゃだめよ」とでも言っているような、子供の成長を喜んでいるような、慈愛に満ちた笑顔を浮かべていました。
この様子がこどもの日、母の日を祝うのに相応しいと思い、5月の表紙に選びました。
結局、子ゾウはインパラに置いて行かれてしまいました。
がっかりしたその後ろ姿が、愛おしい。
ハート型に広がった大きな耳も愛おしい。
寂しくなってしまったのか、すぐに母の元へと駆け寄り、慰めてもらっているようでした。
母の愛の器って大きいですね。
ほっこりさせてくれたアフリカゾウの親子でした。
6月表紙:『VIVID HARBOUR NIGHT』シドニー・オペラハウス
<JCSだよりに添えたキャプション>
恒例となった冬の祭典 VIVID SYDNEY。街中が色彩に溢れ寒さを忘れさせてくれる。露光時間4分の間に、こんなにも多くの船が往来しているなんて!
青いリボンや白いオーガンジー。時を伸ばせば、新たな光の姿が見えてくる。
一瞬一瞬の積み重ねが華を作り出す人生という旅のようだ。
+++
先日終わったばかりですが、シドニーの冬の風物詩となったVIVID SYDNEY。
この作品は、ハーバーブリッジからフェリーの光跡とオペラハウスを、4分間という長時間露光で撮影したものです。
ANAのフォトコンで入賞し、オフィシャルカレンダーにも採用して頂いたのですが、みなさん、ANAのロゴって、覚えていらっしゃいますか?
こちらがANAのロゴです。
「トリトンブルー」「モヒカンブルー」 と命名された青と水色の2色で構成されています。
もしかしたら、作品主役の青と水色の光跡がANAブランドカラーと酷似していたから採用してもらえたのかもしれませんね。
この写真に辿り着くまでは色々アクシデントもありました。
高い場所に登らず横着して地上から撮ってみたら、ごちゃごちゃなんのこっちゃという写真になってしまいました。
ちゃんと光跡が美しく見える角度を考えないといけません。
スマホをいじりながら撮っていたときは、手があたって三脚がずっこけて、光が溶け出してしまいました。
気を散らせてはいけません。
4分間も露光していると、交通渋滞のようになってしまったり、ラインが中途半端だったり、アートとして美しくない。
タイミングを考えないといけません。
納得できず、もう一回、もう一回と、寒空の下、鼻水を垂らしながら、カラフルなフェリーがやってくるのを待ち、タイミングを合わせシャッターを切り続けました。
気が付けばハーバーブリッジの上に2時間。
やっと撮れたのがこの作品だったというわけです。
光跡が、氷盤の上で踊るアイススケーターたちのようです。
白いオーガンジーのリボンも浮かんでいます。
多分ヨットのマストのてっぺんに設置されたライトだと思います。
時間の経過を一つに切り取る長時間露光って、肉眼では気付けない別世界が現れるのでとても楽しいのです。
実はわたし、紫外線アレルギーのため昼間の直射日光が弱点のゾンビのような女でして、そのせいもあり早朝や夜の写真が多めです。
夜の撮影、そして長時間露光といえば、やはりオーロラではないでしょうか。
最後にオーロラを見に地球の北のエリアへ参りましょう。
初めてオーロラを見たのは25年ほど前になりますが、12月のアラスカでした。
極寒マイナス30度。
バナナで釘だって打てますし、濡れたタオルを10回振り回せは板になるような寒さでした。
二日目の晩、突然現れた人生初のオーロラが大空を優雅にゆらめき始めました。
宇宙がすぐそばにある!
あまりにも神秘的で、私はただ言葉を失い、目を潤ませながら立ち尽くしてしまいました。
そしてオーロラは私の人生観をあっという間に塗り替えてくれたのです。
「自分が囚われている苦しみなんて、この壮大な宇宙の前では、なんてちっぽけなものなんだろう。心を閉ざしていたら、見えるものも見えてこないし、気付けることも気付けない。勇気を出して一歩踏み出せば、こんな異次元に触れるような体験だってできるんだ。興味ある事を片っ端からやってみよう。死ぬ時に、おもろい人生だったなと、後悔のかけらも残さないように生きてみよう」と。
まつ毛まで真っ白に凍るほどの寒さでしたが、ハートは温まり、心は自由になりました。
当時はまだフィルムカメラの時代です。
撮ったその場でチェックできるわけではありません。
露光時間が短すぎると何も映りませんし、長すぎると光がボワっとした固まりになり、カーテン状のヒラヒラ感が撮れません。
露光時間を何度も変えながら撮り続けました。
帰国し、ドキドキしながら現像に出しました。
「よかった〜」
何枚かはちゃんとヒラヒラ感が写っていたのです。
再びあの感動が溢れてきました。
ですが、その写真はただオーロラが写っているだけで、どこで撮ったかもわからないしストーリーも臨場感もありません。
これは宿題となりました。
2度目は3月のカナダ・ホワイトホースでした。
ロックダウン解除がようやく始まった頃で、日本一時帰国を兼ねてカナダ入りしました。
この旅ではオーロラ撮影チャンスは3回だけ。
自分に課した宿題を全うさせようと、白樺をフレーム内に入れる事を意識して雪原に立ちました。
オーロラが出たとしてもどこに出るかわからないですから、いつでも動けるよう雪上スタンバイです。
この日は私の誕生日だったので、天からのオーロラプレゼントを期待していたのですが、残念ながら出現せず。
その代わり、月光が作り出したハロをプレゼントしてくれました。
異次元へ繋がる大きなゲートが空に浮かんおり、じっと見ていたら吸い込まれそうになりました。
ちょうど下半分が白樺に隠れていたため、それはまるでナイトレインボー。
雪原は月光に照らされ雪の結晶がキラキラと輝き、足元にも星が煌めいていました。
天にも足元にも星、星、星!
オーロラが出なくとも、最高に祝福された誕生日となりました。
二日目、オーロラは出現したものの、うっすら控えめ。
残るチャンスはあと一日。
最終日はオーロラ予報も出現率が低いことを示しているし、あきらめムードが漂い始めましたが、撤収する直前、非常にアクティブなオーロラが出現したのです!
自然相手撮影あるあるです。
不思議なことに、自然を相手に撮影していると、全く姿を現してくれない狙いの被写体が、撤収間際になるとひょっこり現れることが多々あるのです。
神様、今回もありがとう!
雪に足を取られながらも白樺が入る場所へ急ぎ移動。
ついに臨場感ある写真が撮れました。
でも困ったことに欲深い私は、もっとスケールの大きい壮大な景色の中で揺らめくオーロラ写真を撮りたいと考えるようになってしまったのです。
オーロラは太陽フレアの発生に影響されており、フレアが強いと出現率が高まります。
その太陽フレアは11年周期で非常に活発になるのですが、去年2025年がその年でした。
タスマニアやメルボルン、日本でも観測されたというSNS投稿が多くありましたよね。
前から気になっていたアイスランド。
そこには滝や氷河、溶岩原といった表情豊かな景観がたくさんある。
氷河のトンネルにも行ってみたい。
そしてあの11年周期がやってくる。
意を決して2025年の2月に実行したのです。
個人で行くとなると、雪道の運転は慣れていないし、撮影スポット目指し夜の暗がりを女だけで歩くのも気が引けます。
そこでツアーを探してみたのですが、ほとんどの一般的なツアーの場合、「オーロラ鑑賞はホテルの敷地内からです!オーロラが出るまで暖かいお部屋で待機できます!」が売り文句になっているのです。
でも私は壮大な景色とオーロラのコラボが目標です。
ホテルの暖かいお部屋でまったりしている場合じゃありません。
これでは参加しても不完全燃焼になると思い、探し続け、やっと見つけたのがアイスランド地元の会社が主催しナショナルジオグラフィックのカメラマンが同行するフォトツアーなるものでした。
カメラ小僧たちというのは、朝日も昼間も夕方も夜も撮りたいという欲張りが多いわけですが、そのツアーは私が行きたい場所を含め、全てを網羅していたのです。
迎えたツアー初日の夜、アイスランドで一番キャラの立った魅力的な山、キルキュフェットルへ向かいました。
ありがたいことにオーロラを隠す雲はなく星が煌めいています。
でも肝心なオーロラは、なかなか出てこない。
一人二人とフォトグラファーたちが姿を消していきます。
風がどんどん強くなってくる。
しぶとく1時間半ほど待ったでしょうか、ガイドが「あと10分くらいで出発しようか」と言い出しました。
で、またもや例の自然相手撮影あるある現象発生です。
ついについにオーロラが現れたのです!
オーロラは舞いながらどんどん姿を変えていきます。
カーテンのようだったり、渦巻きが描かれたり、まるで宇宙が空にお絵描きをしているようです。
初め山から離れた場所に出ていたオーロラが少しずつ移動してきて、ついにキルキュフェットル山と重なりました。
そして驚くべきことに、私の背後からさす月光が、滝の飛沫にうっすらと「虹」をかけたのです。
これぞ私が求めていた、宇宙と地球の壮大なる共演、奇跡の一枚です!
私たちの住む水の惑星・地球が愛おしくなってきませんか?
宇宙に恥じない地球に戻れるよう、私たちは地球に負担をかけない生活を心がける必要があると思います。
小さなことからでも良いので始めてみましょう。
そして続けてみてください。
夜の虹やボツワナの魔法のオアシスについては、フォトエッセーにまとめてウェブサイトに掲載していますので、引き続き、脳内旅行を楽しんでいただけたら嬉しいです。
『夜空に虹が架かる時』全4話連載
『PULA!アフリカの魔法のオアシスへ』全25話連載
本日は貴重なお時間をどうもありがとうございました。
追記:JCSだより7月号・講演会の報告記事より
「親睦の会」の6月例会で、シドニー在住のネイチャー旅行写真家Yoriさんによる「地球の素顔を追いかけて」と題した講演会をアーターモンのRobata Jonesで開催しました。東京都出身のYoriさんは、「JCSだより」の表紙写真などを手がける写真家で、世界各地の雄大な自然を舞台に、その瞬間にしか出会えない光と命の表情を撮り続けています。当日は、本誌に掲載された作品を一枚一枚スクリとりわけ参加者の心をとらえたのは、2025年がオーロラの当たり年とされるなか、アイスランドで撮影した奇跡の一枚。漆黒の空を幾重にも彩る光のカーテンの壮大な光景を前にしたときの感動が、言葉と写真を通じて生き生きと伝わり、会場にはしばし静寂が訪れました。近年はあまりにも精緻な写真を見せると「これはAIですか?」と尋ねられることも少なくないと、苦笑まじりに話すYoriさん。だからこそ「血の通ったエッセイと言葉、そして写真を通して、自分が実際に見て、感じ、出会った自然の姿を伝えていきたい」と語り、写真家としての揺るぎない信念と、自然への深い敬意が感じられました。機材をすべて自分で担いで旅する体力的な苦労についての参加者からの質問に、笑いを交えながらも真剣に答えたYoriさん。一枚の写真が生まれるまでの長い道のりに、「水の惑星・地球を守りたい」という彼女の自然への思いが、写真と言葉の一つ一つからひしひしと伝わり、参加者の胸に深く刻まれる、心温まるひとときとなりました。
+++
シドニー日本クラブ(JCS)は1983年に創立され、懇親活動、広報活動、文化教育活動などを通してオーストラリア社会に貢献することを目的とした団体で、過去に外務大臣表彰、在シドニー日本国総領事表彰などを授与されています。
「JCSだより」は会員でなくても、どなたでも読むことができます。





