オーストラリア

特別インタビュー|オーストラリア・火災に挑むボランティア消防隊とマイトシップ精神

こんにちは。

旅と写真をこよなく愛するYoriです。

今回は、特別インタビュー記事として、現役のボランティア消防隊員に伺った貴重なお話しをまとめました。

自然現象として毎年発生するものの、地球環境の変化の影響で史上最悪の事態となったオーストラリアの森林火災。

2019年9月頃から広がりはじめ、全土で110,000km²(本州のおよそ半分の面積)を焼失、4人の消防隊員を含む33人が命を落としました。(2020年1月31日現在)

住民、家屋、農地や動物たちを守るため、体を張って森林火災に挑み戦い続けるボランティア消防隊員たちの活躍がなくては、被害はさらに大きなものとなっていたのは確実です。

オーストラリアのボランティア消防隊員で構成されている地方消防局RFS(Rural Fire Service)とはどのような機関なのか、ボランティアにも関わらず消防隊員たちはなぜ危険と隣り合わせの活動をするのか。

RFS本部の許可が降りたので、2人の現役消防隊員に特別にインタビューさせて頂きました。

キーワードに浮かんできたのは、”コミュニティー”と”マイトシップ”という言葉でした。

長い記事になりますが、最後までお読み頂けたら嬉しいです。

 

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オーストラリア・ボランティア消防隊員が所属するRFSとはどんな機関?

NSW RURAL FIRE SERVICEオーストラリアには、ビクトリア州のCFA/Country Fire Authority、南オーストラリア州のCFS/Country Fire Serviceなど州ごとにボランティアによる消防団が置かれています。

今回取材したRFS(NSW Rural Fire Service)は、シドニーが位置するニューサウスウェールズ(NSW)州の法定機関です。

およそ72,000人のボランティアで構成されており、ボランティア団体としては世界最大の規模を誇っています。(加えて900名ほど有給スタッフが所属)

常時出動可能な約15,000人の消防隊員の他に、事務、運営、管理、火災現場隊員への飲食物の手配・配達、機材のメンテナンス、コミュニティーでの防災啓蒙活動、青少年育成など、活動は多岐に渡ります。

(Source NSW RFS official)

 

NSW州の消防機関

NSW州に限らずオーストラリアでは主に2つの消防機関が市民の生活を守っています。

オーストラリア消防局 Fire and RescueFire and Rescue NSW
日本の消防局に相当する州政府機関で、主に都市部を管轄とし、消防・救助活動にあたっています。NSW州内に335ヶ所配置されており、消防士は職業として従事しています。

 

オーストラリア消防局 Moonee Fire stationNSW Rural Fire Service (RFS)
州政府機関ではありますが、ボランティアで構成され、主に地方地域を管轄として消防活動を行なっています。NSW州の実に95%の地域はRFSの責任下にあります。

 

地方消防局RFSの歴史

フッシュファイヤー 消防隊 Berrigan Bushfire brigadeベリガンの消防隊(1800年代後半)

(出典: Berrigan NSW)

オーストラリアの森林火災(Bushfire・ブッシュファイヤー)は、先史から毎年同じ時期に発生している自然現象です。

農牧地を開拓するためヨーロッパからの入植者が増えた1800年代、遠隔地では自分たちの生活を火災から守る為に、自主的に消火活動を行っていました。

度重なる大火に襲われていたビクトリア州との州境にあるベリガン(Berrigan)で、1889年に初めてコミュニティーを基盤としたボランティア消防団が結成されます。

住民が250人を超え、植民地としては初めての軽鉄道が開通したその年の事でした。

オーストラリア 植民地で初めての軽鉄道オーストラリア 植民地で初めての軽鉄道

(出典: Berrigan NSW)

翌年1900年11月の住民会議で60名が加わり、NSW州政府が正式に承認したため、ベリガン消防団はNSW州で初めての公式消防団として登録されました。

これが現在に続くRFSの起源です。

 

一世紀を経た1997年、ようやく連邦政府は法的保護を打ち出し、使用機器やトレーニングを標準化する法を可決したため、RFSは正式に州政府機関として発足しました。

政府機関として認められたのは思ったより最近のことなのでした。

 

現在のRFS

現在NSW州では、150ヶ所ある消防コントロールセンターのもと、2,100の消防団が地域ごとに配置されています。

RFSの活動は、森林火災の消火と緩和が主な活動ですが、家屋や車両火災、危険物撤去などにも対応し、また、住宅の近くで起こりうる自然発火のブッシュファイヤーを予防するための野焼き(Backfire)も実施しています。

また、NSW救急サービスの支援も頻繁に行っています。

地元コミュニティー活動に参加し、火災予防のアドバイスも彼らの大切な活動の1つです。


ファイヤーファイター、いろいろ頑張ってます^^

 

現場で危険と隣り合わせになる消防団員の初期トレーニングは、個人差もありますが数ヶ月〜半年ほどかけ養成されます。

ボランティアと言えども、彼らは本格的なトレーニングを受けたプロの消防士なのです。

 

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現役ボランティア消防隊員、特別インタビュー

コフスハーバー展望台 Coffs Harbour Lookout

シドニーから北東へ約540キロの場所にあるコフスハーバー(Coffs Harbour)。

海と山に囲まれた風光明媚な場所で、ブルーベリーなど果物の生産や漁業が盛んなリゾート都市です。

観光客にはホエールウォッチングも人気!

また、長崎県佐世保市と姉妹都市提携が結ばれている町でもあります。

このコフスハーバーに置かれている消防団の一つ、ムーニー(Moonee)地区で活躍している現役の消防隊員にインタビューさせて頂きました。

キャプテンのウィル・オブライアン氏(Will O’Brien 写真右)と副キャプテンのビル・リチャードソン氏(Bill Richardson 写真左)のお二人です。

ボランティア消防隊員 volunteer firefighters

キャプテンのウィルさん(33歳)は、3歳から12歳までの4人のお子さんを持ち、交通プロジェクトマネージャーとして働く忙しいお父さん。

RFSには2012年に参加、4年前からムーニー消防団のキャプテンとして活動しています。

副キャプテンのビルさん(74歳)は、6人のお孫さんに恵まれた方で、現役中はシドニーのテルストラ (豪州最大の通信会社) の技術責任者として働いていましたが、リタイア後の生活を生まれ育ったこの土地に戻り過ごしていらっしゃいます。

2008年からRFSで活動している、ベテランの消防隊員です。

+++

Q: 現在、ムーニー消防団には何人が所属していますか?
Will「活動可能なクルー(消防団員)が8名、控えが5名、そしてトレーニング中のメンバーが10人ほどいます。彼らの基礎のトレーニングには数週間を要します」

Q: コフスハーバーには何ヶ所の消防団が置かれていますか?
Will「コフスハーバー消防コントロールセンターは隣のベリンジェン(Bellingen)地区も管轄しており、地域別に20ヶ所以上の消防団が置かれています。 出火場所により、隣接する消防団と共同で消火活動を行なう事もあります。人員が足りなければ、近隣の消防団も出動しサポートし合います」

Q: 州の消防局とも合同で消火活動をするのですか?
Will「RFSは、担当する地域の消火責任を負ってはいますが、

  • Fire and Rescue NSW(州の消防局)
  • NSW州緊急救助サービス(State Emergency Service )
  • NSW林業公社 (Forestry Corporation NSW)
  • NSW国立公園(NSW National Parks and Wildlife Service)

などと合同で消火活動を行う事も多々あります」

RFS and National parks firefightersRFS(オレンジ)と国立公園(黄色)の合同ミーティング

(出典: NSW National Parks and Wildlife Service

NSW 国立公園にも訓練を受けた消防士が1200人ほど所属しており、管轄が広大な森林であるため、航空機を使った空中消火を得意としているそうです。

Q: 他にも合同で活動する事がありますか?
Will「例えば、燃料漏れ、ガス漏れなどの危険物処理・撤去などの作業もRFSが行いますが、状況によっては州消防局との合同作業になります。そのため、州消防局との合同訓練も行っています。」

Q: 日本の消防団は人命救助は行いませんが、RFSはどうでしょうか?
WillRFSも通常は人命救助を行いませんが、緊急を要する場合に救急隊が足りなければ行うことがあります」

Q: どのように出動要請を受けているのですか?
Will「火災を発見した人が「000」(日本の119)に連絡を入れると、RFSの消防コントロールセンターに繋がります。そこからクルーのポケットベルに出動要請の連絡が入るようになっています。
私たちは呼び出しにいつでも対応できるよう常時ポケットベルを携帯しています。
その後はコントロールセンターと無線で交信し、現場の場所や状況、必要な隊員数、機材などの情報が与えられます。
そして、クルーは所属しているムーニーの消防署に集合し出動します」

オーストラリアに限らずアメリカ、カナダ、日本などでも、消防出動要請にはwifiなどのように電波の強弱に左右されない、そして耐久性のあるポケットベルが今でも利用されているそうです。消防活動する場所が遠隔地だったり、ビルの谷間であることが多いからです。

Q: 現場にはどのような体制で向かうのですか?
Bill「キャプテン、副キャプテンの指揮のもと、最大で5人が1チームとなって活動します。ムーニーでは9名の隊員が2台の消防車に分乗します。危険な場所での活動です。
大人数では目が行き届かないので、少人数体制でいつでもお互いをチェックしながら、臨機応変に対応しています」

Will「指揮に関しては、キャプテンと副キャプテンだけで話し合い、決定事項を各クルーに伝えていきます。火災規模が大きく近隣地域の消防団や消防局と合同で対応する時も、各隊の責任者で戦略を練り、更に大きい場合は全体を監督する指揮官を置きます。
例えば消防車が20台集まったとしたら、4つのグループに分け、さらに小さいグループに分けリーダーを置き、リーダー同士で情報を交換する。
指揮命令系統の窓口を一つにすることで、混乱を避け正しい情報が即時トップダウンで伝わる体制をとっています。
軍の命令系統に似ていますが、基本規則に準じれば非常に機能するシステムです」

Q: 消火活動中、危険にさらされた事はありましたか?
Will「それは頻繁にあります。昨年の11月、ある森林火災現場でのことです。私は消防車の中にいました。初めは草むらが燃えていたのですが、急に風向きが変わったことで、火が木々に飛び移り、てっぺんまで燃え上がり、それが他の木々へと私の頭上で大きく燃え広がりました。恐ろしいクラウニングに遭遇してしまったのです。ですが怪我はしませんでした。怪我をしたことは今まで一度もありません。あってはならないからです。」

Bill「私は去年リベレーショントレイルで起きていた大火災で怪我をしてしまった事がありますが、幸いその時のチームに看護師がいたので彼女がすぐに応急処置をしてくれました。ウィルも話したように、怪我はあってはならないことです。私が怪我をした時、応急処置をしてくれた彼女と私の2人のクルーは、その間活動できなくなりました。
現場では戦力を失う余裕などありません。怪我がなければ、全員が戦力になることができます。
”自分に、そして仲間に注意を払う”このフォロワーシステムを実践しています」

ビルさんが話しているリベレーショントレイルで起きた火災とは、前線が120kmにも広がった巨大森林火災の事で多大な被害を残しました。この地域の土地を所有する俳優のラッセル・クロウ氏もフェースブックに投稿しています。

 

Will「私たちには3つの優先事項があります。

  1. 人々の命を守る。
  2. 家屋や所有地を守る。
  3. 原状回復。

しかし、それ以上に重要なのが、クルーの安全です。私はクルーの安全がいかに大事であるかを学びました。」

Bill「なぜなら、クルーを失っては、守るべきものも守れないからです。優先事項も遂行できない。ですからクルーの安全が第一なのです」

Will「もし大火が襲ってきたら、すぐに下がる、そして待機する。クルーを配置することはありません。繰り返しますが、何よりもクルーの安全が第一です」

 

ウィルさんたちが遭遇してしまった森林火災の「クラウニング」とは、草むらの火が木に燃え移り、木から木へ頭上で大きく燃え広がる状況のことで、時に25m以上の高さにもなります。

どのようなものなのかサンプル動画をご覧ください。


(ソース: The Telegraph)

 

Q: 今年の山火事は例年と比べてどう違いましたか?
Will「ここ、コフスハーバーの地域では毎年9月頃(南半球では春)から山火事が発生します。気温の上昇と共に、シドニー、キャンベラでは10月〜11月に始まり、メルボルン、アデレードでは12月〜1月というように南下していきます。
今年はオーストラリア全体の降水量が異常に少なく、干ばつが酷かったことが被害を拡大した原因の一つと考えられます。過去の大森林火災はいつも大きな干ばつの後に起きています。
この地域でも火災発生箇所が例年に比べて非常に多く、乾燥や高温も影響して、今まで一度も燃えた事のない場所にまで被害が拡大しました。火災の威力も激しく、今年の活動は困難を極めました。」

Q: 森林火災発生を防止する事はできるのでしょうか?
Will「火災の原因は自然発火だけではなく、人によるもの(火の不始末など)が多くあります。この部分の対策はできても、完璧に森林火災発生を防御する事はできません。
干ばつ→山火事→洪水がサイクルになっている。
これがオーストラリアだからです。」

 

森林火災に挑む消防士たちに敬意を表して、オペラハウスがライトアップされました。(2020年1月11日)

Q: なぜ危険と隣り合わせの消防隊員をボランティアに選んだのですか?あなたにとってどんな意味がありますか?
Will「私はクイーンズランドの郊外で生まれ育ったのですが、コミュニティーの中で育ち、いつでもその一員として活動してきました。NSW州に移り住み、コミュニティー活動に参加しようとRFSの方と面接をしました。「どこに住んでるの?近くなの。じゃ参加して」という彼の一言でRFSの一員になる事になりました。
コミュニティーのための活動に参加することは、自分にとってごく自然のことなのです。生まれ持った気質のような。

私にとってのボランティアは “リリース・解放” です。仕事のプレッシャー、子供達への責任などからの解放です。」

Bill「仕事をリタイアし、ムーニーに戻って来ました。ソファーに座りテレビを見ているだけの人間になるのは嫌だったので、フットボールのコーチをやっていたこともあります。
コミュニティーのため何か違う事にチャレンジしたいと思いRFSに入りました。当時、消防隊の副キャプテンをしていた友人に誘われたのがきっかけです。」

Q: その頃、人材が足りなかったのですか?
Bill「いつでもより多くの人材が欲しいのです。例えば、ウィルのように仕事をしている人は日中の活動はしにくい。自分のようにリタイアした人はそこをカバーすることができる。」

Will「以前のRFSのメンバーは主にリタイアした人たちでした。今はちょうど転換期にあると思うのですが、年々山火事の発生数が増えおり状況が変わってきています。
リタイアした高齢の方たちだけでなく、体力のある若い力も必要になっているのが現状です。それが、私のRFSに参加することを決めた理由でもあります。」

Q: 若い世代と高齢の世代が補い合って活動するということですね?
Will「その通りです。チームの中に昼間も自由に活動できる人がいるというのは、ボーナスのようにありがたい事です。」

Bill「ウィルのように若い世代の人は、仕事を持っているし、小さい子供のいる家庭を持った人も多いので、出動できない場合もあります。
私の場合はリタイアしていますから、24時間、毎日いつでも出動する事が可能です。」

Moonee Beach Rural Fire Brigade(写真右) キャプテンのウィル・オブライアン氏(赤ヘルメット)とシニア副キャプテンのスティーブン・オックスフォード氏(白ヘルメット)
(写真左) 基本消防訓練の為に集まったムーニー消防隊のみなさん

Q: ウィルさんはお仕事をされていますが、両立は難しいですか?
Will「私が勤務している会社は、RFSの活動に非常に理解がありサポートしてくれています。
たとえば、翌日の日中に急遽キャプテンミーティングが決定された場合でも、「問題無いよ」の一言で了解してくれました。しかし、どこの会社もそうだという訳ではありません。
一度火災現場に出ると、すぐには戻れない場合もあります。
先日、ビルも一緒に出動した現場ですが、出動要請が夜8pm過ぎにあり、消火活動が終わったのは翌日の正午近くだったという事もありました。当然仕事には行かれません」

*ボランティア消防を続けるには、本人の意思はもちろんの事、勤務先の理解やサポートが非常に重要になってきます。個人経営や小企業の場合、火災の度に欠員が出るのはビジネスとしても損失にあたるので、参加がしにくくなり、結果ボランティアを継続することが出来なくなる場合も多々あるそうです。

ボランティアのクルーたちは有給休暇を使い仕事を休み、無給で消火活動に当たっています。今回の森林火災は予想以上に長引き、仕事に戻れず収入が途絶えている人も多く出ました。

昨年2019年末に政府は、長期出動のボランティア団員は条件付きで休業補償を請求できると発表しました。あくまでも臨時的な措置で、消火活動への報酬ではなく、「ボランティアたちの経済的損失の補填」としています。

Q: 仕事や家族を持ち、更にこの重労働なボランティアを続けるのは大変な事ですね。
Will「はい。ですが、優先事項を1.家族、2.仕事、3.ボランティアと決めています。

Q: そうすると、出動要請を断る事もできるのですか?
Will「できます。それは、私たちが“ボランティア”だからです。もし報酬が出たとしたら、この活動はボランティアではなく義務になってきます。
義務になれば、優先事項の順番を変えなければなりません。
ボランティアだからこそ、この活動を続けることができるのです。

Bill「例えばウィルの場合は、仕事場からムーニーの消防署まで30分以上かかるので、火災の状況によっては、彼を待っているよりも即刻対応することが優先される場合もあります。
そのようなケースでは副キャプテンである私の指揮で、昼間自由なリタイアしているクルーだけで出動することもあります。
しかし、高齢であるがゆえ、若手と比べると長時間の消火活動は体力的に難しいという面もあります。
「できる事はやるが、できない事はやらない」それがボランティアというものです」

Q: 日本ではボランティアというと、心、お金、時間に余裕がある人がやる事と考える人が多いのですが、この国ではボランティア精神が他の国より強いようです。
Bill「それはオーストラリア人が「Look after your mate」という価値観を持っているからだと思います」

  • Look after は広い意味がありますが、面倒をみる、世話をする、気にかける、支える、手助けすると解釈できます。
  • Mate (マイト) は、仲間、友達、相棒という意味に置き換えられますが、夫婦間でも、知らない人同士でも使われます。上下関係のない平等さが根底にある、オーストラリア独特の意味を持つ言葉です。

Bill「この国は巨大な面積があるけれど、人口は少なく、現在でもそのほとんどが海岸線の地域に住んでいます。歴史は浅い国ですが、当初から内陸で生活するためには仲間を持ちお互いに助け合わないと、命を落としかねない厳しい環境がありました。
孤立を避ける必要があったのです。
そこからマイトという概念が生まれてきたのでしょう。
今も続く助け合いの精神「マイトシップ」が、ボランティア精神を後押ししていると考えられます」

オーストラリアでは海岸線から50km以内の地域に人口85%以上が住んでいます。ちなみに国土は日本の約20倍、人口は5分の1。内陸は都市部のような経済活動には不向きですが、オーストラリアならではのアウトバックの景観が楽しめます。
(Source: Australian government)

Q: 最後に、日本の皆さんにメッセージはありますか?
WIll「森林火災を怖がらずに、是非オーストラリアに来てこの美しい国を見てください!シドニーやメルボルンなどの都市だけでなく、自然豊かな田舎町やブッシュにも足を運んでください。素晴らしい国です。
草木も新しい葉が生まれ、森は蘇っています。
Go Regions, Go out to Bush!”」

ウィルさん、ビルさん、どうもありがとうございました。

 

森林火災 芽吹き after bushfire
森林火災 芽吹き after bushfire森は蘇ってきました!(2020年2月9日)

 

駐日オーストラリア大使、リチャード・コート氏が、森林火災で大きな支援をしてくれた日本の皆さんにメッセージを送っています。

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オーストラリア人のマイトシップ精神

Google Australia Day オーストラリア建国記念日オーストラリア建国記念日のグーグルドゥードゥル(トップページ)のイラスト。国民をつなぐ復興への力とマイトシップからインスピレーションを得て描かれたものだそうです。Doodle Archive

 

マイトシップ (mateship:オーストラリアでは「メイト」ではなく「マイト」が近い発音です)とは、仲間意識、連帯感という言葉にも置き換えられますが、オーストラリア人の気質として深く根付いている「困っている人がいたら手を差し伸べる」という助け合い精神のことです。

オーストラリア在住日本人の友人たちにマイトシップで助けられた事があるかと聞いてみると、すぐさま答えが帰ってきます。

  • 子育て中、乳母車で階段を一人で登った事がない。必ず誰かが気持ち良く手伝ってくれた。
  • 車のタイヤがパンクして困っている時、誰かがすぐに手助けの為に止まってくれた。
  • スーツケースの滑車が石畳みで外れて立ち往生している時、通りすがりの人が直してくれた。

オーストラリア人のマイトシップは、面と向かわない間接的な行動にも多く見受けられます。

例えば、2011年、サイクロンでバナナ農園が大打撃を受け、バナナ価格が通常の8~10倍近くの値段になった事がありました。

1キロで$16以上したのです。

ある日、オーストラリア人の友達とスーパーで買い物中、私がバナナの値段に驚いていると、彼女は「高いけれど、私たちが買えば、バナナ農園復興の助けになるでしょう。素敵な募金みたいじゃない笑?」と言いながらバナナを買っていました。

残念ながら、当時の私にはそのような発想はなく、友人の行動に感銘を受けた記憶があります。

 

convicts were transported to Australia.(出典: National museum Convict transportation peaks )

オーストラリア 人には、見返りを期待しない助け合いの精神、そして自由と平等を尊重する価値観が気質として根付いています。

この国は1700年代後半、イギリスの流刑地として始まり、1788年から1868年の80年の間に、軽犯罪者も含め162,000人以上がイギリス・アイルランドから送られました。

彼らに課せられたのは開拓という重労働。

月〜土、日の出から日の入りまで働くと規定されており、生活も厳しい規則に縛られていました。

自由と平等への意識は、この時代に階級社会への反発から生まれたとも言われています。

1800年代半ばになると、アメリカに次ぐゴールドラッシュで、ヨーロッパからの入植者が激増します。

彼らを苦しめた1つは内陸部の過酷な気候と広大すぎる土地。

乾燥・高温・洪水・山火事・嵐などの自然の威力の前で人間の力などちっぽけなものです。

人同志が助け合わないと生活ができないどころか、生き残るのも困難な環境であるがゆえ、知識、知恵、技術、労力は互いが必要としており、自然とコミュニティーが生まれていきます。

コミュニティーの一部として身を置き、助け合いながら過酷な環境の中を生き抜いていく中で育まれた価値観が「マイトシップ」でした。

手を差し伸べる事をいとわない気質は、現在のオーストラリア人に受け継がれています。

この「マイトシップ」は、連邦政府によっても公式に定義されています。オーストラリアで市民権を取得するには、市民権テストに合格する必要がありますが、そのテストの内容は、歴史、政治、文化、スポーツ、価値観など多岐に渡っています。

ガイドラインとなる小冊子が発行されており、そこにはオーストラリア人の価値観、気質として「マイトシップ」についても盛り込まれています。

インタビューさせて頂いたウィルさん、ビルさん共に

「消防隊の活動は危険を伴ってはいるが、コミュニティーの助けになる活動をする事はごく自然の事です。特別な事ではありません」

と話されています。

山火事現場レポートでお話しを伺ったSimon Tadrosseさん(経営するリンゴ園が40%焼失)は、

「自分の果樹園だけでなく、コミュニティー全体の復興のために動きたい」

とおっしゃっていたのを思い出しました。

コミュニティーを森林火災から守る人、守られる人、どちらにもマイトシップが感じられました。それゆえ互いの信頼・尊敬・尊重を基盤としたコミュニティーでの生活を営む事ができているのですね。

 

以前、ビルさんがショッピングセンターで買い物をしている時、若い男性が声をかけてきて、

「あなた方が僕の家を山火事から救ってくれました。あの時は本当にありがとうございました」

と感謝の言葉を伝えてくれたそうです。

このようなコミュニティーを温める「マイトシップ精神」がオーストラリアの力なのだと、深く感じ入る取材となりました。

 

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ボランティア消防隊の消防署を見学!

ムーニー消防署には、2台の消防車が導入されています。

消防車 fire truck category1カテゴリー1 大型消防車(写真右)
3,000~4,000リットルの水タンクを積載。
主にキャプテンのウィルさんが運転します。

消防車 fire truck category7カテゴリー7 小型消防車(写真左)
800~1,600リットルの水タンクを積載。
主に副キャプテンのビルさんが運転します。

現場へは、小回りの効くカテゴリー7が先導、大きいカテゴリー1が後に続きます。

 

消防車内

消防車車内 断熱材 fire truck insulation消防車に乗せて頂きました。

中はムッと焦げた臭いが充満し、そして全ての窓には熱遮断シートが装着されています。

改めて森林火災現場の過酷さを思い知らされました。

 

消防車ホース収納消防ホースの収納庫です。ホースは用途別に太さが違います。

  • 25mm→ブッシュ(草地)消火用
  • 38mm→家屋やビル消火用
  • 65mm→給水用

 

消防車 ホースアタッチメント FIre truck hose attachmentこれは、州消防局の消防車にRFSのホースを繋ぐ時のアタッチメントです。

ホースの径が違うのでこれを使い接続可能にします。

RFSには他にもカテゴリー2 (中型消防車), ポンプ車、給水車、4WD車、バイク、消防船、空中消火用のヘリコプター・航空機など、地域の状況に合わせた機材を保有しています。

消防車後ろ
ムーニー隊・消火活動現場ムーニー隊・消火活動現場

 

まとめ

朝靄のコフスハーバー ジェティービーチ Hazy morning at Coffs Harbour Jetty Beach朝靄が美しいコフスハーバー ノースウォールビーチ

 

特別インタビューとして、オーストラリア・火災に挑むボランティア消防隊とマイトシップ精神について書いていく中で、住民でもなかなか知り得ない事を得ることが出来たように思います。

彼らの勇気ある行動には、オーストラリア人が文化・気質として持っているマイトシップ精神が力となっていることを知り、ますますこの国のファンになりました。

ボランティア消防隊キャプテンのWillさんも日本の方へのメッセージとして、また、ツイッター動画でもオーストラリア大使、在日オーストラリア商工会議所会頭がオーストラリアに遊びに来て下さいと力強くおっしゃっていました。

景色だけでなく、人々の心も美しい国です。

是非遊びに来て下さい!

私もオーストラリアの魅力、その魅力を引き出す写真の撮り方も合わせてどんどん発信していこうと思います。

長い記事になりましたが、最後までお読みくださり、ありがとうございました。

フォトラベるラウンジ